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先生は外科手術なしの反対咬合の矯正を行うことに関してどう思われますか?
広瀬先生、こんにちわ。
初めてご質問させていただきます。
長くなりますが、よろしくお願い致します。
小さい頃に反対交合を指摘され、両親が矯正の治療をしてくれたのですが、その当時チンキャップ(?)のようなものを被ってる児童は殆どなく、周りからの白い目に耐え切れずに2−3ヶ月でギブアップしてしまいました。
幼い頃はそれでよかったのですが、年頃になってから歯並びのことが気になり始め、再矯正をしたかったのですが、矯正器具をつけるのに抵抗があったり、仕事や子育てに追われていたりで、40歳近くになってから、やっと矯正専門医に会いました。
矯正医の診断によると、下顎の骨が長く、角度も急であり、外科手術なしの矯正は、今より噛み合わせが悪くなるだけだから、絶対に薦められないと言われました。
手術を受けるしか道はないと言われ、悩みましたが、下記のような理由で断念しました。
1)見た目は正常(下あごが出ているようには見えないという意味)なので、手術で顎の形を変える必要を感じない。
2)手術が恐ろしい。(術後の痛み、感染症、後遺症)
3)まだ幼い子供を抱え、1−2週間も入院できるような環境にない。
4)前の歯は噛み合ってないけれど、もう慣れてしまったので、そのことによる不自由を感じていない。
その後、なぜ私ほどの(軽度に見える)歯並びが矯正できないのだろうか?
ちょっと下の歯を後ろに倒し、前歯を少しだけ出せば、完璧な歯並びは得られなくても、反対交合を軽減することくらい可能なように思えるのに、と疑問を抱きつつ、さらに数年経過しました。
しかしながら、昨今私のような高齢の女性でも矯正をしている人を多くみかけるようになり、やはり矯正したい!!という気持ちがまた強く膨らみ始め、先日また別の矯正医に会ってみました。
その先生がおっしゃるには、下の歯を少しずつ平たいデンタルフロス状のもので削ってスペースを作り、下の歯を後ろに傾けて、噛んだときに前の歯の後ろに来るようにするという矯正治療が可能ということでした。(奥歯のフィリングの程度と歯を動かすのに必要な隙間を考えると、私の場合は歯を抜くという選択肢はないそうです。)
また、懸念されるオープンバイトが起こるのを防ぐために、治療の後期は、寝てる間のみラバーバンドで奥歯を固定する必要があると言われました。
さらに、まず上の歯のみ矯正して(6−8ヶ月)、その経過を見て、下の歯をどうするか(削るか、抜歯するか、あるいは手術か)を考えるといった案もあると言われました。
今、この先生を信用していいものかどうか、迷っています。
もちろん、完璧な噛み合わせを望めば、手術以外にないというのは、どの矯正医も一致した意見だと思います。
私がもし矯正医であっても、歯並びを直す(平らにする)だけが目的ではなく、健康的な噛み合わせが目的であってしかるべきなので、手術を薦めると思います。
けれど、外見的な悩みをもっていたら、もっと若い頃に迷わず(どんなに痛くても!)外科的処置を受けていたと思うんですが、私は今の自分の横顔に不満があるわけではないので、下手にいじって、自分が受け入れられない方向に風貌が変わるのも怖いのです。
何の資料(レントゲン、写真など)も見せることなく、このような質問をして大変申し訳ないのですが、先生は外科手術なしの反対咬合の矯正を行うことに関してどう思われますか?
やはり、一人でも「手術なしでは噛みあわせが悪くなるだけなので、できない」と言う矯正医が居る以上、そのようなリスクを負ってまで矯正に踏み切るべきではないのでしょうか?
また、歯を削ること(おそらく、何本も削ることになると思います)と、上の歯だけ矯正するといった案についても、先生の意見をお聞かせいただけませんか?
お忙しいところ恐縮ですが、ご回答の方、どうぞよろしくお願い致します。 |
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広瀬矯正歯科院長の広瀬豊です。
反対咬合を矯正単独で治療するか外科手術を併用した外科矯正で行なうかは顔のレントゲンーセファロや模型である程度決まります。(当院ホームページー検査内容参照)
”ある程度”というのは数値上の基準はあるのですがそれはあるひとつの数字ではなく幅があること、および矯正医の考え方や経験がそれに加味されるからです。
特に後者による差が結構大きいのです。
たとえばできるだけ理想に近い咬み合わせを目標にしている先生は外科矯正が多くなります。
ただ単純でないのは、いくら理想を目標にしている先生でも過去に外科矯正でうまくいかなかった経験があったり、外科矯正の経験がなければ当然矯正単独ですることになるでしょう。
矯正単独でする場合もうまく治療できる知識、技術を持っているかどうかで変わってきます。
その他にも患者さんの希望をどの程度取り入れるか、これもかなり治療方針を左右します。
以上のように治療方針を決定する際に影響する因子はかなり多く、10人の矯正医に聞けば10通りの方法があると言われています。
本題に入りますが、まず外科矯正なしの矯正についてですが許容できる範囲であれば良いと思います。
では私の考える許容できる範囲とは、歯の移動に無理がない範囲、今の状態より悪い咬み合わせにならない範囲、後戻りの起こらない安定した範囲ということになります。
前2者は歯の寿命だけでなく、顎関節や筋肉に支障を来すことを避けるため、3つ目は当たり前のことですが、せっかく希望通りになってもすぐに元に戻ったのでは意味がないからです。
また上の歯だけ矯正してそれから下をどうするかを決めるという選択肢はあり得ると思います。
ただよほど複雑な問題がある場合を除いて検査をしたあとであれば、先生には歯の動きについては予想はついていると思います。
あなたに考える時間を与えるために言われたのではないでしょうか。
歯のエナメル質を少しずつ削ることによりスペースを作る方法はディスキング、スレンダライジング、あるいはストリッピングと呼ばれ、矯正治療ではよく用いられる方法です。
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お忙しい中、早速ご回答をいただき、恐縮です。
大変参考になりました、ありがとうございます。
もう一点ご質問させていただいてよろしいでしょうか?
手術なしで矯正するという方向に気持ちは固まっているんですが、インターネットを見ますと、手術なしで反対咬合の矯正を経験された方々からの「サルのような口元になった」「口元が突起した」「出っ歯(に見える)ようになった」といった書き込みが多くみられます。
これは、無理に下の歯に被せるようにするため、上の歯をひろげる、あるいは前に出す為、ある程度必然というか、避けられないものなのでしょうか。
そして、この程度には個人差はあると思いますが、一般的に、そんなに形相が変化するものですか?
とても矯正だけでは(言葉は悪いですが)誤魔化しきれない反対咬合の場合は、やはり手術が必要で、それを無理にやると口元が著しく出っぱってしまうこともあると思うんですが、私の場合、そうならない程度におさまるからこそ、手術なしでもいけると矯正医が判断したのだと思いたいです。
けれど、先日このことが気になって確認しましたら、「無理に下の歯に被せるようにするんだから、上唇が今より出っ張るのは当然だよ。それに下の唇も引っ込むよ。手術したくないんでしょ?(だったら仕方ないじゃないの)」といった回答でした。
なんとなくこの言葉に、矯正をするのが怖く、不安になっています。
その先生のもとで、レントゲンとモデルをとったのですが、その代金を諦めて、もう矯正を止めようかと悩んでいます。
このような、口元が出っ張ったりというのを避けるためには、やはり手術しか選択肢はないのでしょうか。
もちろん、多少の変化が出るのは仕方ないことと思います、ただ、あまりにも今より顔、口元の感じが変わってしまうといわれると、不安で仕方ありません。
広瀬先生の診療所にお伺いすれば、手術なしの矯正を選択した場合、私の顔、口元に、どの程度の変化が現れるか、矯正治療を始める前に判断していただくことは可能ですか?
以上、また長くなってしまいましたが、お時間のあるときに返信していただけると有難く存じます。どうぞよろしくお願いいたします。 |
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その先生のおっしゃるように矯正単独で治す場合は上の前歯を前方へ出すことになります。
そうすると口元が多少元の状態よりも出ることは避けられません。
横顔のレントゲン写真(セファロ)があれば、ある程度矯正後の状態を予測することは可能ですが完璧ではありません。また2次元での予測になりますから、予測が一致したとしても実際の結果とは受ける印象は多少違ったものになります。
すでに検査をされたとのことですので、同じような治療をされた患者さんの口元の変化を見せて頂いたらどうでしょう。それだけでもあなたの治療後をかなりイメージできると思います。 |